なぜ、あんなに強く言ってしまったのでしょうか
些細なミスに、思わず強い口調で返してしまった。相手の顔がこわばったのを見た瞬間、「しまった」と思ったけれど、もう言葉は戻ってこない。そんな経験をしたことはありませんか。
こんな瞬間に、心当たりはありませんか。
– 後輩の小さなミスに、いつもなら流せることまで強く指摘してしまった
– 家族の何気ない一言に、必要以上にきつく返してしまい、気まずい空気になった
– 会議中、誰かの発言を遮るように、つい強い口調で意見を言ってしまった
言ってしまった直後から、ずっと後悔が消えない。「なんであんな言い方をしたんだろう」と、何度も頭の中で繰り返してしまう方もいるかもしれません。仕事の手を止めて、さっきの光景を何度も思い返してしまい、他のことが手につかなくなることもあります。
それは、あなたが乱暴な人間だから、ということではありません。むしろ、後になって相手のことを気にかけられるくらい、優しい気持ちを持っているからこその後悔なのだと思います。本当に気にかけていない相手であれば、こんなに引きずったりはしないはずです。
実は私自身も、締め切り前で寝不足が続いていたある日、後輩が同じミスを繰り返したことに、いつもよりずっと強い口調で指摘してしまったことがあります。後輩が黙って頷く姿を見て、その日の帰り道、ずっと自己嫌悪を引きずっていたのを覚えています。
家に帰ってからも、あの時の後輩の表情が頭から離れず、夕食もろくに味がしないまま食べていました。「明日、どんな顔をして会えばいいんだろう」と、眠れないままベッドの中で考え続けていたこともあります。
「自分はひどい人間だ」その決めつけ、本当でしょうか
「あんな言い方をするなんて、自分はひどい人間だ」と、その一回の出来事だけで、自分の人格全体にレッテルを貼ってしまうことがあります。
でも、一度きつい言い方をしてしまったことと、あなたが「ひどい人間」であることは、本当はイコールではありません。それは、あなたが取った一つの行動であって、あなたの全てではないはずです。普段は穏やかに接している時間の方が、実際にはずっと長いはずです。
「また同じことをしてしまうに違いない」と、この先ずっと直らないことのように感じてしまうこともあります。でも、それは今のところ、まだ起きていないことです。先のことを、悪い方向に決めつけてしまっているだけなのかもしれません。
実際には、その日の体調や睡眠、抱えていた業務量など、いくつもの条件が重なって、たまたまああいう言い方になってしまっただけ、ということも多いはずです。すべての条件が同じように重なることは、そう頻繁には起こりません。
これは、あなたの人格に問題があるからではありません。眠りが足りていないとき、脳の中で感情にブレーキをかける部分が、普段よりも働きにくくなると言われています。普段なら聞き流せることにまで、強く反応してしまうのは、疲れた脳が起こす、一時的な仕組みの問題なのかもしれません。
普段のあなたなら、同じ場面でもきっと違う言い方ができていたはずです。その日だけ、いつもの自分に戻れなかっただけなのだと思います。
体調が万全な日と、そうでない日とでは、同じ人でも別人のように反応が変わることがあります。それは弱さではなく、人間なら誰にでも起こりうる、ごく自然な波なのだと思います。
相手も、実はそこまで気にしていないかもしれません
言われた相手も、実はあなたが思うほど深く傷ついていない、ということもあります。人は、自分が想像するほど、他人の失言を長く覚えていないものだと言われています。あなたが一週間気にしていることを、相手はその日のうちに忘れている、ということも珍しくありません。
相手にも、それぞれの受け止め方があります。指摘されたことをすぐに切り替えられる人もいれば、しばらく引きずってしまう人もいます。どちらが良い悪いということではなく、ただ、心の立ち直り方が違うだけなのだと思います。
翌日、相手が普段通りに接してきてくれたなら、それは「気にしていない」というひとつのサインかもしれません。もちろん、様子がいつもと違うと感じたら、その時はあらためて言葉を添えればいいのだと思います。相手の反応を見てから対応を考えても、決して遅くはありません。
もし、少しだけ試してみたい気持ちがあれば、「さっきは言い方がきつくなってしまって、ごめんね」と、一言だけ伝えてみる、という方法もあります。長々と説明する必要はありません。短い一言の方が、かえって伝わることもあります。
言い訳を並べるよりも、シンプルに謝る方が、相手にとっても受け止めやすいことが多いようです。「寝不足で余裕がなかった」と、理由を添えるかどうかは、その時の関係性に合わせて選べば十分です。
もうひとつ、その日の夜は、いつもより少し早く休んでみる、という方法もあります。眠りを取り戻すことは、同じことを繰り返さないための、静かな備えにもなります。無理に早起きする必要まではありません。「今日は少し早めに寝る」と決めるだけで、翌日の心の余裕は変わってきます。
もちろん、今はまだ謝るタイミングではないと感じるなら、無理に伝えなくても大丈夫です。何も行動を変えなくても、「疲れていただけなんだ」と知っておくだけで、少し心が軽くなることもあります。時間が経ってから、自然なタイミングで気持ちを伝え直すのでも遅くはありません。
今夜は、その自己嫌悪をそっと手放してみませんか
一度、強い言葉を口にしてしまったことは、あなたのすべてを表すものではありません。その日、あなたがどれだけ疲れていたかを、一番よく知っているのはあなた自身です。
後になって悔やめること自体が、あなたが誠実であろうとしている証です。本当に相手のことをどうでもいいと思っている人は、こんなに長く自分を責めたりしないものです。
誰かを傷つけたくないと願う気持ちがある限り、あなたは大丈夫です。その気持ちさえあれば、これからも少しずつ、関係を丁寧に築き直していくことができます。完璧である必要はなく、その都度、丁寧に向き合い直せば十分なのだと思います。
明日も、無理せず、あなたのペースで大丈夫です。今夜はその自己嫌悪をそっと手放して、ゆっくり休んでくださいね。
