その重さ、一人で背負い込んでいませんか
後輩の相談に乗り、トラブルが起きればまずあなたに聞かれ、新しいシステムの説明もあなたが任される。それなのに、肝心な判断をする場面になると、「それは上に確認してから」と言われてしまう。そんな経験をしたことはありませんか。
こんな瞬間に、心当たりはありませんか。
– 会議で意見を求められて答えたのに、最終的な決定はいつの間にか別の誰かがしていた
– 後輩から頼られて、休憩時間まで相談に付き合っているのに、評価に反映されている実感がない
– 「〇〇さんに聞けば分かる」と頼りにされる一方で、肝心な決裁権はいつも自分の手元にない
責任だけが積み重なって、権限は何も増えていかない。そんな状態が続くと、頑張れば頑張るほど、心がすり減っていくような感覚になってしまうこともあります。周りからは「頼りになる人」と見られているのに、当の本人は、誰にも本音を言えないまま孤立していく、ということも少なくありません。
これは、あなたの実力が足りないから、ということではありません。むしろ、これまで積み重ねてきた経験と信頼があるからこそ、頼られているのだと思います。
実は私自身も、あるプロジェクトで、若手からの質問対応や資料作成のほとんどを任されていたのに、最終的な承認は別の担当者を通さなければならない、という時期がありました。深夜まで資料を作り込んで提出したのに、翌朝、内容をほとんど確認もされないまま形だけ通っていくのを見て、静かにやるせない気持ちになったのを覚えています。
会議の場でも、自分が発言した内容が、そのまま別の人の言葉として採用されているのを見たことがありました。悔しさよりも先に、「自分の存在は、この場に必要なのだろうか」という虚しさの方が、じわりと胸に広がっていったのを覚えています。
「弱音を吐いてはいけない」その思い込み、本当でしょうか
「これだけの経験があるのだから、弱音なんて吐いてはいけない」と、自分の気持ちにまで厳しいルールを課してしまうことがあります。周りに頼られている自覚がある分、余計に弱さを見せられなくなってしまうのです。
でも、経験があることと、辛さを感じないことは、本当は別の話です。経験を積んでいる人ほど、多くのことを背負っている分、疲れやすいのは自然なことなのかもしれません。
また、これまで築いてきた信頼や、感謝された場面はたくさんあったはずなのに、今回意見を通せなかったという、たった一つの出来事ばかりが心に残ってしまうこともあります。良かったことよりも、うまくいかなかったことの方が、記憶の中で大きく膨らんでしまうのです。
これは、あなたが後ろ向きだからではありません。人は、うまくいかなかった一つの出来事の方を、記憶に強く残しやすいようにできていると言われています。それだけ、真剣に向き合ってきた証なのかもしれません。
「もう自分の意見なんて誰にも聞いてもらえない」と、一度の出来事から先の展開まで決めつけてしまうこともあるかもしれません。でも、その日たまたま状況が重なっただけで、これから先もずっとそうだと言い切れる根拠は、実はそれほど多くないのだと思います。
若い上司にも、それぞれの事情があります
あなたの意見が通らなかったのは、軽んじられているからとは限りません。人には、それぞれ大事にしているものが違います。早く結果を出すことを優先する人もいれば、時間をかけて正確さを重視する人もいます。若い上司は、さらに上からのプレッシャーの中で、スピードを優先せざるを得ない立場にいるだけ、ということもあるかもしれません。
管理職という立場は、外から見えるほど自由が利くものではないことも多いようです。数字や期限に追われながら、限られた裁量の中で判断せざるを得ない、という事情を抱えていることもあります。
経験の浅い上司ほど、自分の判断に自信が持てず、無意識のうちに「確認」という手続きを増やしてしまうこともあります。それは、あなたを信頼していないからではなく、その人自身が不安を抱えているからなのかもしれません。役職が上でも、心細さを感じていないとは限らないのです。
さらに、組織のルール上、決裁の手順そのものが硬直的になっていて、個人の裁量ではどうにもならない場合もあります。その場合、目の前の上司個人を責めても、状況はあまり変わらないかもしれません。仕組みの問題と、人の問題を、少し切り分けて考えてみるのもひとつの視点です。
もし、少しだけ試してみたい気持ちがあれば、意見としてではなく、「過去にこういうケースがありました」と、事実として一言共有してみる、という方法もあります。経験に裏づけられた事実は、意見よりも説得力を持つことがあります。感情を込めて説得しようとするより、淡々と事実だけを伝える方が、案外すんなり受け止めてもらえることもあります。
もうひとつ、自分の裁量で決められる小さな範囲を、まず自分の中ではっきりさせてみる、という方法もあります。すべてを一人で背負おうとせず、任されている部分とそうでない部分を分けて考えるだけでも、少し肩の荷が軽くなることがあります。手帳の隅に、その範囲を書き出してみるだけでも十分です。
もちろん、今はまだそのタイミングではないと感じるなら、無理に働きかけなくても大丈夫です。何も行動を変えなくても、「権限がないのは、あなたの価値が低いからではない」と知っておくだけで、少し心が軽くなることもあります。転職や異動を今すぐ考える必要もありません。まずは、自分の中にある虚しさに気づいてあげることから始めても、十分だと思います。
今夜は、その虚しさをそっと横に置いてみませんか
頼られているのに決められない、というもどかしさは、あなたがこれまで真面目に積み重ねてきたことの裏返しでもあります。誰にでも簡単に務まる役割ではないはずです。経験も信頼もないところに、人は相談に来ません。
肩書きや権限だけが、あなたの価値を決めるものではありません。困った時にまっさきに頼られる存在であること自体が、すでに大きな財産なのだと思います。
その財産は、誰かに承認されなくても、あなたの中にちゃんと残り続けます。これまで積み重ねてきたものが、ある日突然消えてしまうことはありません。
明日も、無理せず、あなたのペースで大丈夫です。今夜はその虚しさをそっと横に置いて、ゆっくり休んでくださいね。
それでもやっぱり今の状況に違和感を感じている時は・・・
かつての私も、「会社を辞めたいと思うのは、自分の甘えや逃げではないか」と、夜も眠れないほど自分を責め続けた時期がありました。
あの頃の苦しさは、今でも忘れられません。だから、同じように悩んでいるあなたに、どうしても伝えたいことがあるんです。
転職は、「逃げ」じゃない。あなたが本来の力を発揮できる場所へ向かうための、「戦略的な移動」なんです。私自身も、思い切って環境を変えたことで、ようやく自分に自信を持てるようになりました。
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